2013年03月18日

アルゴ

鑑賞映画館:MOVIXココエあまがさき
シアター2
鑑賞日時:3月7日
評価:A

原題:Argo
製作:2012年 アメリカ
監督:ベン・アフレック
出演:
ベン・アフレック
ブライアン・クランストン
アラン・アーキン
ジョン・グッドマン
ヴィクター・ガーバー
テイト・ドノヴァン
クレア・デュヴァル

映画生活 goo映画



※ネタバレを含む場合があります。


1979年に発生し、世界を震撼させたイラン革命。そしてその最中に発生したアメリカ大使館員が人質にされ長期間抑留された事件の裏話的エピソードである、カナダ大使館に避難していた6名を架空の映画撮影クルーだと偽装して脱出させるというカナダ政府とCIAにより実行された奇抜な作戦を元に作られたのがこの映画です。
史実としては機密になっていた期間が長いこともありセンセーショナルな内容の割には知る人ぞ知るといったエピソードで、この映画で初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。

一言で言えばかなり面白い映画です。
あまり好きな表現ではありませんが「ハラハラドキドキ」というのはこの映画のためにあるようなものだとすら思えます。
もちろん史実を元にしている以上どうせ最後は助かるんだろうというものはあるにしても、ちょっとした油断が死に直結するような状況でのギャンブルに近い逃避行という、それだけでも手に汗を握るような話を最初から最後まで見せ場たっぷりに描き出していきます。

当時の記録映画的な映像にすることをかなり意識しているようで、敢えて当時の記録映画のような画質にしてあるのもなかなか効果的ですし、映されている構図もかなり意図的に当時の映像らしくしてあるように感じます。
作品最後のスタッフクレジットのところで当時の記録映像と映画で使われた場面を並べて見せていましたが、そこまでやるかというくらいに当時の映像を再現してあることに驚きます。
言い換えるなら、当時の記録フィルムに映っていないところでこんなエピソードがあったとでもいうような、あるいは当時撮影されたまま未公開だったフィルムをこういう形で公開しているとでも言わんばかりの物凄い説得力を創りあげているわけです。
この結果、そこらのアクション映画など足元にも及ばないほどの面白さとリアルさ、そして垣間見えるケレン味まで含めて、非常に面白い映画が作り上げられているのです。

ここまで偏執的なまでに忠実に史実を再現したと言っていい画面作りがされていると、「面白い映画」にするためのある程度の脚色や設定の簡略化等はあるにしても、大筋では史実どおりだろうと思ってしまうものです。
しかし、ちょっと調べてみるとこれが全く違うことに驚かされます。
それどころか人物の設定、行動、起きたこと、その他ありとあらゆるところが史実とは全くことなり、むしろ同じなのはイラン革命の最中にアメリカ大使館員の6名が映画クルーに偽装して空路脱出したという、本当に大筋のことだけでしかないくらいなのです。

映画では非常に重要なものとして描かれていたCIAエージェントと家族との関係も架空のもののようですし、「アルゴ」というSF映画を思いつくエピソードも全く異なるようです。
クライマックスとして描かれていた空港での緊迫した場面も実際には機材トラブルで出発が若干遅れてたくらいでほとんど何もなく出国できたらしいですし、史実では大きな役割を果たしたカナダ政府など劇中では殆ど何もしないまま最後に手柄と名声を横取りしたような描かれ方をされている始末です。

つまりこの映画は実話を題材にしつつもほぼフィクションであり、架空の映画を撮るという実話を元に、実話のように見せかけられた架空のストーリーという奇妙な構造の映画だと言えるのです。

それではこの映画は一体何なのでしょうか。
製作者の意図としては必ずしも面白いわけではない史実をひっくり返して「面白い」娯楽映画を作り上げた。ただそれだけなのかもしれません。例えば「アンストッパブル」のようにハリウッドは時々そのような映画を作るものです。
そして、たとえそれだけだとしてもかなり評価できる面白い映画なのも確かです。

もしかすると一部で言われてるように親米宣伝映画なのかもしれません。
確かに、作品冒頭でアメリカの介入が革命を招いたことを説明してはいるものの、全体としてはアメリカというより、CIA贔屓の視点でしか描かれていないのは間違いありません。
とはいえ私はこれはCIAエージェントを主人公としたわかりやすい娯楽映画を作ろうとした結果であって元々の目的ではないと感じます。

では何なのでしょうか。
私はやはり実話を元にかなり割りきって作られた娯楽映画と見るべきだと感じます。
そして、その中に隠し味として含まれている映画、あるいはハリウッドに対する製作者達の強い思い入れと、圧倒的なまでの映像に対する拘りがこの映画をただのアクション映画とは一線を画した味わい深い作品にしたのではないかと思います。

何にせよ、かなり面白い映画です。
描かれていることを実話だと思ったり、この映画だけを見てイラン革命とは何かを断じたりするようなことは避けるべきですが、この映画をきっかけにしてイラン革命について学んだり、そこからさらに現代にまで続く中東情勢に思いを馳せるのも悪いことではないのではないでしょうか。





posted by lasta at 20:13 | Comment(0) | TrackBack(16) | あ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月09日

フライト

鑑賞映画館:TOHOシネマズ梅田
シアター2
鑑賞日時:3月1日
評価:B+

原題:Flight
製作:2012年 アメリカ
監督:ロバート・ゼメキス
出演:
デンゼル・ワシントン
ドン・チードル
ケリー・ライリー
ジョン・グッドマン
ブルース・グリーンウッド
メリッサ・レオ
ブライアン・ジェラティ

映画生活 goo映画



※ネタバレを含む場合があります。


重大な航空事故を奇跡的な操縦で最小限の被害に食い止めた英雄である機長。
しかし、事故後の調査で血液中からアルコールが検出されたこで一転疑惑の人へ……というような映画で、予告を見た感じでは航空事故に関する法廷闘争を主に描いたサスペンスものという雰囲気が強かったのですが、実際には全く違う話で、かなりストレートにアル中(及びヤク中)でかなりダメダメなオッサンを描いた作品でした。

まぁ、そういうわけで航空事故はあくまで舞台装置に過ぎず、あくまで機長個人のアルコール中毒と虚飾に満ちた人生からの脱却を描いた作品です。
そう思って見ればなるほどと思える内容ではあります。

重大な航空事故の大きな原因として取りざたされ、もし飲酒を原因とする過失致死と認定されてしまえばパイロットとしてのキャリアを失うどころか終身刑すら現実のものとなりうる勤務前、そして機内での飲酒。しかし、それを認めず事実を隠蔽してしまえば英雄として遇され、自分も会社(組合)も万々歳。そしてそれは同時に自らにも他人にも嘘をつき続けなければならないということでもあるという葛藤を描いた映画です。
なるほどよくできた内容です。

ストーリー展開や描写も割と丁寧ですし、出演陣もかなりいい演技をしています。
映画の内容から見ればほとんど前座扱いではありますが、航空事故の場面の描写が非常に良いことも間違いありません。
よくできた映画だということは間違いなく言えます。

ただし、根幹となるところにアメリカ的、あるいはキリスト教的な価値観が大きく横たわっていることが気になります。
全体の構成としては、アルコールに浸る生活=旧来のアメリカ的な生活=自分も他人も騙し続けることで維持される英雄としての立場と、アルコールから脱却した生活=自分の罪を認め悔い改めて正直に生きる立場を対比させ、元々前者の立場だった機長が葛藤を繰り返しながら最終的には後者の立場を選ぶという筋書きになっています。
これはキリスト教的な価値観を前提にすれば(道徳の教科書的な価値観の押し付け感はあるにしても)かなりわかりやすく筋の通ったものではありますが、アルコールを飲んでの勤務を悪とすることのみを共通の価値観とした日本の視点ではかなり意味不明な言動と場面の多い映画だと感じることが多いのではないかと思われます。
つまるところこの映画は、アメリカの価値観で作られたアメリカ国内向けの啓発映画であって、本来はそれ以上でもそれ以下でも無いと思えるのです。

である以上あまり日本ではお勧めしにくいタイプの映画で、冒頭の航空事故の異様なまでの出来の良さのためにパニック映画として見に来てしまった人がかなり肩透かしを食らってしまうことになるのは、ある程度仕方のないことかもしれません。





posted by lasta at 20:32 | Comment(0) | TrackBack(13) | は行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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