2010年12月24日

ザ・ウォーカー

鑑賞映画館:DVD
鑑賞日時:11月13日
評価:A-

原題:The Book of Eli
製作:2010年 アメリカ
監督:
アルバート・ヒューズ
アレン・ヒューズ
出演:
デンゼル・ワシントン
ゲイリー・オールドマン
ミラ・キュニス
ジェニファー・ビールス

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※ネタバレを含む場合があります。

この映画は、マッドマックスを思わせる核戦争により文明が崩壊した世界で、一冊の本を運ぶために旅を続ける男を描いた作品です。

この映画、特に前半は別の作品を思い出す作りです。
世紀末救世主伝説というサブタイトルを付けられたあの漫画です。
実際、描かれているものも荒野や廃墟と化した街を旅しながら、襲いかかってくる悪党を次々に倒し、仲間と出会い、そして立ちふさがる悪の親玉と対決という流れなど共通点は多いです。

ただし、この映画の特色は、運んでいる本が聖書であり本人もまた啓示に従い信仰を力として旅をしているなど宗教色が極めて強いことでしょう。
特に中盤から後半になるに従ってその雰囲気は強くなり、どこかの宗教団体が布教用に作ったのではと思わせる感じになっていきます。
自らの権力のために聖書を欲した者が形としての聖書を手に入れはするものの、結局何も手に入れることができず自滅していく姿を描くあたり、その最たるものでしょう。
これで最後に宗教的な聖地に辿り着き聖者として迎えられるとか、その地を中心に神の教えが世界を覆い無明の世界に新たな光がなどという大団円を迎えるのならば、はいはいそうですかおめでとさんで終わりの宗教宣伝映画です。

が、どうもこの映画それで終わりではない気がします。
苦難の果てに辿り着いた場所はあまり宗教的ではなく、あくまで失われた文化の保存と修復を行っている場所…博物館と言った方が良いような場所なのです。
そして、持ち込んだことで宗教的な聖者として特殊な扱いをされたり、あるいはそこで宗教的な奇跡が起き周囲の人が神の教えに目覚めるなどといった感じは一切ありません。
あくまで失われた文化の一部を持ってきてくれた人がいた、それだけです。
さらに、画面上では一瞬のことでかなりわかりにくいのですが、再生された聖書が置かれた棚は、クルアーンやユダヤ教の聖典、その他いくつかの宗教書が並んでいる棚に過ぎず、この聖書…あるいはキリスト教を特別視しようという思想を感じることはできません。
つまり、男が一生を懸けて運んだ本は、彼らが収蔵する膨大の知識や文化の空いた部分を埋めただけでしかなかったのです。

これはいったいどういうことでしょうか。
神の啓示に従い、宗教的信念に満ちた旅をし、その本を自らの権力に利用しようとする者と戦い、物としての聖書は与えるがその内容は与えず、最終的には世俗的な多くの知識と同じ扱いをされる。しかし、それこそが神の啓示であり、神の示した道である、そういう話です。

これは、やたらと形式ばったり、聖書の文言にやたらと拘るキリスト教の一派に対するアンチテーゼなのでしょうか。
それとも、宗教色はただの舞台装置で、描きたいのは信念を持って目的を貫き通すことの尊さでしょうか。
私には何とも言えません。
しかし、どちらにしろ単純な宗教宣伝とは程遠いところにあることは感じられます。

何にせよ、一見したところ世紀末アクション映画でありながら、実はアクション映画とは言えない不思議な作りの映画です。
モノトーンを基調とした画面や、必要以上の説明をせず淡々と進んでいく流れなど、独特の存在感を作りあげることにも成功しています。
中盤でかなり強くなる宗教色に抵抗がある人も多いでしょうし、どうしても見る人を選んでしまうタイプの映画のような気はしますが、これはこれでありな映画と言えるのではないでしょうか。

posted by lasta at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(1) | さ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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