2012年01月23日

聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―

鑑賞映画館:MOVIXココエあまがさき
シアター7
鑑賞日時:1月5日
評価:B

原題:聯合艦隊司令長官 山本五十六
-太平洋戦争70年目の真実-
製作:2012年 日本
監督:成島出
出演:
役所広司
坂東三津五郎
柄本明
柳葉敏郎
吉田栄作
阿部寛
伊武雅刀
袴田吉彦
香川照之

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※ネタバレを含む場合があります。


山本五十六と言えば太平洋戦争開戦時の連合艦隊司令長官で、功績や知名度から考えても日露戦争における東郷提督と並ぶ帝国海軍の代名詞的存在と言えるでしょう。そしてこの映画は、この山本五十六を中心として三国軍事同盟締結から太平洋戦争に至る日本を描いたものです。

正直言って、この映画はいったいどういう層を狙って作られたのかが疑問になる作りです。

描かれているのは、不正確な報道をしてでも大衆を煽ろうとするマスコミや、威勢のいい話に扇動されがちな国民、そして頑迷な陸軍によって戦争への道を歩み続ける国家の中で、開戦に反対し開戦やむなきに至っても何とかして講和の道を模索し続ける「良識派」としての海軍であり、その代表格としての山本五十六です。
私個人はこのような海軍善玉論にはかなり懐疑的で、この映画で描かれている立場には必ずしも賛同するものではありませんが、戦後に書かれた本の多くがこの立場で書かれていることもあり、太平洋戦争についてある程度知識がある人であれば何をいまさらと言った程度の話でしょう。
描かれている個々のエピソードも、話を整理するための架空の人物の存在はともかくとして大筋では史実をなぞっているもので、こちら方面にある程度の知識がある人にとっては最初からわかっている話を見ているだけで新鮮味や驚きは特に無いと言えます。

逆にあまり知識の無い人にとってはかなりわかりにくい映画だと感じます。
開戦前夜から太平洋戦争前半までの海軍の中枢そのものを映像化していることもあり、どうしても登場人物が多く、またその役職等々も多岐に渡るのですが、画面上では主役の山本五十六以外は場面によってかなり変わるにも関わらずその説明があまりされておらず、目の前にいるキャラが誰でどういう役職なのかもかなりわかりにくいものがあります。
新聞社での記者向けの説明を通してある程度の解説はされるものの、これもかなり限定的で、ほとんどの場合セリフの中から名前等を聞きとる必要があり、こちら方面の知識が少ない人にはその人が一体何者で、なぜそのようなことを言っているのかすら理解しづらいのではと思えます。名前と役職を字幕で入れるくらいの配慮はあっても良かったのではと思います。
また要所に架空の人物を配しているのも、数々のエピソードをまとめやすくするためではあるのでしょうが、太平洋戦争の入門として初学者の人がこの映画を見た場合、完全な架空の映画と異なり史実に近い作りの映画であるため架空の部分と史実の部分を混同して誤解を与えてしまう恐れすらありますし、デタラメな映画よりもかえって勧めにくい映画のようにも思えます。

太平洋戦争そのものを描いた映画と考えた場合、連合国側の視点も陸軍側の視点も一切無く、あくまで海軍、それも山本五十六の周辺ことしか描いていないのが大きな問題と言えるでしょう。
この映画は客観的に歴史的事象を描いているわけではなく、あくまで一つの立場から見た出来事を綴っていってるに過ぎないのです。

戦争アクション映画として考えてみた場合、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦のような戦闘シーンには確かに悪くない絵は撮れてはいます。
が、描き方が非常にあっさりしていてどうにも盛り上がりきれないまま終わってしまい、なんとも消化不良な感じがしてしまいます。
元々アクション映画というわけではないでしょうし別に構わないことではあるのでしょうが、娯楽映画として作られた戦争映画にありがちなカタルシスは感じにくいのではと思います。

では、山本五十六という人物を描いた映画としてはどうでしょう。
確かにその意図は感じられますし、本来この目的で作られた映画ではあるのでしょう。
が、様々なエピソードを淡々と描き続けるだけでどうにも今ひとつ盛り上がりに欠けるきらいがあります。
映画としての起伏は全くと言っていいほどなく、淡々とイベントをこなしてるうちに死ぬ時間になったので死にました。という程度のものにしか見えないのです。
確かに「目と耳と心を大きく開いて世界を見なさい 」というセリフは現代に通じるとても素晴らしい言葉ではあります。が、劇中では唐突に語られる感があり、どうにも上滑りしている感じがしてしまいます。
新聞記者と相対してる場面だけではなく、常に周りに流されて威勢のいいことを叫んでいる連中を嫌うような発言を続けていたりしているならば、この映画のテーマとして持ってこれそうなくらいのものなのですが、そこまでの覚悟も感じられず、やはり描かれている様々なエピソードの一つでしかないという感じです。

つまり、一体何を作りたかったのかが今ひとつ見えてこない映画なのです。
もう少しどこかに焦点を絞ってドラマチックに仕立て上げていればかなり面白いものになりえた感じなのではありますが、総花的に色々なものを突っ込んだだけと言ったものになってしまった感じです。
たとえばあの若手新聞記者からの視点に絞って山本五十六を描くだけでも、かなりまとまった面白い作品になりえたのでは、と思えます。

ある程度知識がある人間だとかえって楽しめない作品ではあるのかもしれませんが、正直色々と残念な作品ではあり、一番印象に残ったのが史実とはかけ離れたキャラクター作りでありながら圧倒的な存在感を出していた阿部寛が演じる山口多聞だったというのが、この映画の微妙さを象徴するところなのかもしれません。





posted by lasta at 00:46 | Comment(0) | TrackBack(1) | ら行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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誰よりも、戦争に反対した男がいた。「聯合艦隊司令長官 山本五十六 -太平洋戦争70年目の真実-」
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Weblog: Addict allcinema おすすめ映画レビュー
Tracked: 2012-03-10 22:57
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