2013年01月08日

カラスの親指

鑑賞映画館:MOVIXココエあまがさき
シアター5
鑑賞日時:12月20日
評価:A

原題:カラスの親指
製作:2012年 日本
監督:伊藤匡史
出演:
阿部寛
村上ショージ
石原さとみ
能年玲奈
小柳友
鶴見辰吾

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※ネタバレを含む場合があります。

この映画は道尾秀介の同名小説の映画化で、不思議な縁で一つ屋根の下に住むことになった詐欺師と仲間たちが人生の逆転を狙った大勝負をしかける、といった話です。

いや、これがなかなか面白い。
ストーリーは基本的には個性のきつい面々が集まり「敵」に対して様々なトリックを仕掛けて現金を盗み取ることで復讐を果たすといったような展開で、いわゆる詐欺を期待して見ると肩透かしを食らいはしますがこれはこれでオーシャンズを彷彿とさせる面白い流れです。
そしてここで試みられた現金強奪があまりにも一方的、あるいは都合良く成功したところで、話は一旦大団円を迎えます。

ちょっと消化不良気味だしもう一捻り欲しいけど、まぁ普通に面白いし、このくらいの単純なストーリーの方がわかりやすくていいのかもな… などと思っていたところから始まる種明かしがこの映画の真骨頂でした。

いや、やられました。
観客を騙す目的で小手先のトリックを多用する映画はいくらでもありますが、だいたいそういうものは得てしてストーリーが破綻してしまっていたり、伏線も何もあったものではない行き当たりばったりで観客を置き去りにしていくような展開だったりしがちなものです。
しかし、この作品に関しては最初からずっと細かい部分にトリックの伏線がばら撒かれていて、完全に騙されていたという驚きとともに、考えなおしてみても非常に納得のいく展開を維持できているばかりか、ただ驚かせるだけのストーリーではなく最終的にはちょっと感動までしてしまう人情話としてまとめるという素晴らしいものです。
この見事なまでの構成は脱帽するしかありません。

敢えて難を言えば、村上ショージの演技力でしょうか。
もちろん俳優が本業ではない人ですし、中盤までの展開で終わるのならややたどたどしさがある劇中の演技で何の問題もなく、むしろ素晴らしい仕事をしたとは言えるのですが、最終的に実は・・・ という役柄である以上、最後のシーン、特に長セリフの部分でのたどたどしさに難を感じてしまいます。
確かに非常に難しい役回りではあり、では誰がいいかと言われると非常に難しいのですが、香川照之のような演技力と特異な存在感を持った俳優を使った方が良かったのではとも思えます。

何にせよかなり面白い映画であったのは間違いなく、2012年の1年間に見た映画の中で一番面白かったものはどれかと言われたら、私はこの映画を推したいと思います。





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2011年12月11日

GAMER



※ネタバレを含む場合があります。

この映画は、ネットワークを介して人間の脳をコントロールする技術が実用化された近未来を舞台にしたSF映画です。

この映画ならではと言っていい部分は、ナノ細胞と呼ばれる特殊な細胞を脳に注入することで行われるネットワーク越しの行動のコントロールで、この技術をネットゲームという娯楽として一般社会に提供しているというところでしょう。
登場するゲームは2つで、1つはセカンドライフ的なSNSのアバターを実際の人間をコントロールすることで行う「ソサエティ」。もう一つが死刑囚をコントロールすることで実際にフィールド上で殺し合いが行われるFPS的な「スレイヤー」
この2つです。

なるほどと思わせる設定ではあります。
ソサエティに関しては、そこで行われていることはやや爛れているとはいえ危害が加えられるようなものではありませんし、特殊な技術で他人に行動をコントロールされることによる人間としての尊厳云々という問題はあっても、それはあくまで希望者のみで、誰も強制しているわけではありませんし、本人も納得しての話です。報酬もあります。
もちろん、実際には他にろくに仕事もない貧困層が僅かな収入と引き換えに他人に支配される、言葉は悪いですが奴隷になるというものだったりするのですが、ゲームへの俳優としての参加という形にすることで、富裕層には娯楽を、貧困層には仕事と収入を提供することができるという、福祉や行政による富の再分配が崩壊した未来社会では大きな社会貢献事業とすら言えるものになっているのです。

もう一つのゲームである「スレイヤー」は死亡率がやたらと高い戦闘ゲームで、その非道さも出演が死刑囚に限られているということで正当化されているものです。
このゲーム、どう見てもとんでもない量の死刑囚を消費している、つまりそれだけの死刑囚が供給されているということになりますので、いったいこの時代はどれだけ治安が悪いのかと思ってしまいもするのですが、極端な不況下での治安悪化に対抗するには面白い手法で、何しろ行政の立場から言えば本来出さないといけないはずの刑執行に対する費用を出さずに済むどころか、プレイヤーからの参加費の一部が収入として入ってくることも期待できる。そして、このシステムを維持するための費用は強制的な税金ではなく、あくまで娯楽として参加するプレイヤーが自発的に供出する参加費によって賄われるという、まさに夢のようなシステムだったりします。
さらに、ここで行われる戦闘を中継して見せることが直接ゲームに参加していない多くの人たちの娯楽にもなり、この部分での広告収入すら見込めます。

よく考えると酷い話ではあるのですが、閉塞した状況における一つの階級社会を現代の延長線上に作りだした面白い設定とは言えるでしょう。
で、この映画、このような基本的なところでは光る部分がありながら、肝心の話がどうにも投げやりと言いますか、それらしい要素を適当に集めてぶちまけて終了したとでも言いますか、もうちょっとどうにかならないかと思ってしまうような出来だったりするのです。

ストーリーは行き当たりばったり的ですし、アクションものとしても戦闘シーンそのもののできは悪くないものの比較的陰惨な画面が続き、爽快感はいま一つです。もちろん粗は多いです。
特に気になる点はゲームを動かしている主体であり、物語の一つの極と言っていいプレイヤーの描き方が中途半端すぎる点で、それなりに面白いキャラ立てがしてあり、うまく使えば良いストーリテラーになりそうな描き方がされていながら、ゲーム中はただ足を引っ張るだけの邪魔な存在にしか見えず、クライマックスシーンでもなぜそこでからんで来るのか伝わってこない(もちろん、よく考えれば理解はできるのですが)という、なんとも微妙な感じになってしまっています。

思うに、この映画は2時間程度の一作品に無理にまとめてしまうよりも、テレビシリーズとして半年や1年くらいのある程度の長期間に放映する作品として作った方が良かったのではないでしょうか。

ある程度の長い時間をかけてきっちり描いていけば、他人に行動を支配され無慈悲な殺し合いを強制されている葛藤からシステムの破壊に向かう主人公、システムを通して社会を牛耳ろうとする悪役としての開発者、そして本来は中立から開発者寄りの立場ながら主人公とコミュニケーションを取っていくことで次第に主人公サイドになびいていくプレイヤーという三者を中心とした面白いストーリーが作れたように思えます。
そして、この三者三様の話をベースに謎解き的な部分を入れていけば、本編では一応入れてみました的な消化不良感があった主人公が収監された理由に関する部分や、レジスタンスの活動と言ったものも、非常に面白い要素になりえたのではないでしょうか。

なんにせよ面白いアイデアを映像化している割に全体に消化不良感が付きまとってしまう、かなり残念な感覚を抱いてしまった映画です。
派手に色々やろうとしていながら地味な印象だけが残ってしまうことも含め、せっかくのいい材料を料理しそこなった失敗作と言えるのかもしれません。





posted by lasta at 11:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | か行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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