2012年01月15日

少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録

鑑賞映画館:DVD
鑑賞日時:12月23日
評価:A-

原題:少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録
製作:1999年 日本
監督:幾原邦彦
出演:
川上とも子
渕崎ゆり子
子安武人
三石琴乃
久川綾
草尾毅
西原久美子
本多知恵子
今井由香
及川光博

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※ネタバレを含む場合があります。


この映画は1997年にテレビ放映され、その特異で抽象的な描写とテーマ性で話題になったアニメ作品の劇場版です。
テレビ版と比較した場合、特殊な学園を舞台にした剣による決闘や、その勝者への賞品としての少女の存在など大まかな設定は踏襲されているものの、キャラクター造形から各種設定、ストーリーの流れに至るまでかなりの相違点があり、別物と考えた方がいい部分が大きいものになっています。

一見して非常に特徴的なのは、やはり非常に作りものっぽい描写でしょう。
もちろん、アニメ作品はどんな作品でも多かれ少なかれ戯画的な部分があるものではあり、必ずしもリアリティを追及しているわけではないとは言えますが、この作品に関してはある種の開き直りと言いますか、完全に作り物的、あるいは舞台演劇の書き割り背景的な描写が随所に見られ、独特な雰囲気を持った世界観を作り上げています。
そしてこの独特の違和感や非現実感こそが作品の持つテーマ性、メッセージ性につながっているとも言えると思います。

もちろん劇場版のために再構築されているとは言え、そこはやはりウテナ。スピード感のある激しいアクションシーンや特殊な人間関係などを次々に見せていきながら、さらっと見ただけでは結局は何がなんだかわからないまま終わってしまう極めて抽象的かつ難解な作品です。
私自身最初に映画館で観たときにはよくわからないけど凄かったが感想の全てのような状態で、ある程度内容を吟味して見ることができるようになったのはかなり後の話です。
そうである以上様々な解釈が可能な話ではありますが、敢えて解釈を試みた場合、主役たる男装の少女=天上ウテナと、ヒロインあるいはお姫様である姫宮アンシーは基本的に同一人物であり、アンシーは具現化されたウテナの深層心理だと見るべきでしょう。
つまりは、舞台となっている学園も、そこで行われている決闘ごっこも、その勝者に与えられる少女アンシーも、その他全ての美しくも残酷なものたちは基本的には全てウテナの精神世界の出来事であり、必ずしも愉快なものではない現実世界の様々な事象の投影だと考えられます。
つまり、冬芽を死なせてしまった幼い日の事故など受け入れたくない現実から逃げだす先の理想郷こそがあの学園であり、勝者に賞品として与えられる少女アンシーはあらゆる苦難を自らの意志を放棄することで受け入れているもう一人の自分ということではないのでしょうか。
そして、作品全体を通して描かれているものは、この偽りの理想郷の中で朽ち果てるのを待っているだけの自分自身を外の現実世界へと旅立たせる過程だと考えられるわけです。
そう考えれば、この学園のあらゆるものが作りもののようであることも、夢の中の出来事のように主観と客観が入り混じった描写も、かなり唐突に車へと変身しカーチェイスを行うというラストへ至る超展開も、全て納得がいくものになるのです。
そしてこのカーチェイス、そして最終的には学園に戻そうと甘い誘惑をしてくるアンシーの兄の幻影を打破し外の世界に旅立って行こうという流れこそが、現実へ旅立とうとする強い気持ちと、甘美な理想郷の中へ戻りたいという甘い気持ちの葛藤を表したものと言え、この作品全体を通した大きなテーマとなっているのだと考えられます。

ところでこのカーチェイスシーンでは非常に印象的なものが登場します。
それは行く手を遮る巨大な城のような構造物です。
これは外見は美しい城でありながら、その実態は大小様々な車輪で通り抜けようとする全てのものを容赦無く押し潰そうとする凶悪な障害物で、そこを無傷で通過することはまず不可能な代物です。
それは外からは素晴らしい憧れのものに見えても実態は酷い、しかしその洗礼を浴びなければさらにその先、自分が進みたい世界に行くことはできないという社会の縮図のようですらあります。
もしかするとこの城こそが作者の現実への思いそのものかもしれません。

もちろん、様々な解釈ができる作品である以上、他の解釈も色々と可能です。
制作サイドからは正解のようなものは特に提示もされていないですし、どれが正解というわけでもありません。
むしろ、このような作品は、作品を通して何かを考えるきっかけにするのがいいのではないかと思いますし、そのきっかけにするには十分なくらいの抽象性とテーマ性を持った作品であると、私は感じます。






posted by lasta at 03:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | さ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月18日

スカイライン -征服-

鑑賞映画館:DVD
鑑賞日時:11月10日
評価:B

原題:Skyline
製作:2010年 アメリカ
監督:
グレッグ・ストラウス
コリン・ストラウス
出演:
エリック・バルフォー
スコッティ・トンプソン
ブリタニー・ダニエル
デイヴィッド・ザヤス
ドナルド・フェイソン
クリスタル・リード
ニール・ホプキンス

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※ネタバレを含む場合があります。


この映画はロサンゼルスを舞台に、突然飛来した巨大UFOによる宇宙人の侵略を描いた作品です。
軍隊と宇宙人との戦いといったものも一部描かれはしますが、基本的には巻き込まれてしまった一市民を描き続けていくのが特徴で、巨大な生物兵器が暴れ回る雰囲気や、現場に居合わせた人の視点に近い映像を多用する手法はクローバーフィールドを彷彿とさせるものがあります。

まぁ、低予算ながら頑張りましたといったところでしょうか。
確かにいろいろと安っぽい部分は散見されます。
宇宙人や、その生物兵器の造形も安っぽいですし、舞台はほぼ一つのマンションの中だけ、それもほとんどは同じ部屋の中と屋上だけで話が進行していくと言っていいくらいに場面が変わりません。
出演者陣もなんとも地味で、派手なアクションシーンなど望むべくもありません。
しかし、意外なまでに見ていられる映画としてまとまっていた印象です。

特に、クローバーフィールドを思い出させるような出演者視点に近く、限定された視点で状況を追い続けるカメラワークが印象的で、次に何が起きるかわからない、そして一つの危機から脱出できたかと思えば次の危険が迫っているというスリル感の連続を演出できていますし、クローバーフィールドのように劇中で登場人物が撮影していたとい縛りもないことからある程度俯瞰した絵も入れられ、何が起こっているか全くわからなかったあの映画と比べれば遥かにわかりやすいものになっていると言えるでしょう。

マンションの一つの部屋からあまり動かずに話が展開していくことも、やや退屈な部分は否定しませんが窓の外で展開している非日常と部屋の中に残った日常という対比を作り出せていますし、そしてそうであるからこそ、どうしたらいいか全くわからない状況の中で少しでも元の日常に近い方で身を守りたいという意識も理解でき、同じ部屋からあまり動こうとしないという部分にある程度の説得力も持たせられています。

VFXに関してはいろいろ言ってもハイドラックス制作の映画です。
この予算規模の作品としては奇跡的なくらいによくできていますし、これだけでも見る価値があると言えるでしょう。

ですので、もしこの映画がそれなりに納得できる終わり方をしていれば、私はいい評価を出していたと思います。
しかし、どうにも終わり方が納得できません。

宇宙人は地球人の意思や行動をコントロールする技術を持っていました。
彼らが発する光を見ただけで地球人は思考を乗っ取られてしまうのです。
そして、その結果多くの地球人が抵抗もせず、彼らに捕まったのです。
こうして捕えられた地球人は宇宙人により解体され、その脳を利用して新たな宇宙人の尖兵が作られていったのです。
この部分もいろいろ言いたいこともないわけでもないのですが、まぁ使い捨てと現地調達可能な高度な処理装置として脳を使われているのだと考えれば、これはこれでいいでしょう。
人型ではないもう少し大きな生物兵器にも内部に人間の脳のようなものがあったことを考えると、宇宙人の戦法は地球人の脳そのものを利用して現地(地球)で兵器を生産し、そして侵略するというところにあったと考えられます。
あまり趣味のいいものではないとは思いますが、面白い発想ではあると思います。

しかし、宇宙人に捕らえられ、変わり果てた主人公がヒロインを助けようとして終わるラストは一体何なのでしょうか。
彼が宇宙人のコントロールを脱出する有効な能力を持ち得たことは断片的ながら一応描写されているので良しとするにしても、肉体的な能力では周りの同類と全く同じでしかなく、これではどう見ても多勢に無勢、映画のラストシーンの数秒後に惨殺されて終了だろうとしか思えません。
百歩譲ってアメコミヒーローのような力を彼が手に入れてヒロインを救うという展開がこのあとされるとしても(続編の話があるようですし、こうなりそうな気配濃厚なのですが……)これはこれでこの映画の中でそれまで展開されていた圧倒的な現実に対抗する無力な個人という悲壮な流れを全く無視したデタラメな超展開でしかありません。

もうどうしたらいいのだろうと思ってしまうようなラストで、様々な異星人侵略ものの要素をぶちこむだけぶちこんだあげくにまとめきれなくなった脚本家が、どうしようもなくなって無理やりな思いつきで終わらせたとしか思えないような代物です。
別に宇宙人を倒してのハッピーエンドでなければならないとは言いませんし、何か高尚なメッセージを出せとも言いません。
見ていてもう少し納得できる流れにしてくれたらそれでよかったのですが……。






posted by lasta at 17:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | さ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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